研究概要 |
平成22年度は,平成21年度に引き続き,絵画の色彩構成の客観的分析のために必要な感性要素を探ること,分析に必須の画像色彩処理アルゴリズム・プログラムの開発,さらに色彩分析の基礎となる表色系と人間の色感覚・色知覚との関係の見直しを行った.以下研究実績を,学会等における発表内容に即し,時系列的に述べる.(次ページの平成22年度研究成果をも参照されたい.) 2010年5月には,日本色彩学会第41回全国大会において,代表的な知覚色表色系であるMunsell, PCCS, NCSの諸色属性間に先験的な数学的関係が存在することを明らかにした.また同大会において,画像の面構成分析に階層的領域抽出アルゴリズムが適用可能なことを示した. 6月発行の日本色彩学会誌34巻2号には,女子美術大学の李氏らと共同研究の成果である,2色配色の美しさと計量可能な知覚量との関係を明らかにした論文が,掲載された. 9月に渡仏し,研究協力者であるM.Albert-Vanel氏と研究打合せを行った.また同氏を含む画家および科学者のグループと絵画の質感についてディスカッションを行った.(この成果は平成23年度に発表する予定である.) 11月には,第4回色彩情報シンポジウムin長野において,1型/2型色覚者と色覚正常者との色感覚を統一的に説明するモデルについて発表した.この成果は,画像の色情報と人間の色知覚を結び付ける重要な意味をもつであろう. 12月発行の日本色彩学会誌第34巻4号および2011年3月発行の同誌第35巻1号に,19世紀フランスの色彩学者M.E.シュヴルールの先駆的な著作「色彩-その工芸への応用/色相環を利用して-,1864年」を翻訳掲載した(次ページのリストには未掲載).これは筆者がおよそ8年かけて仏語原著から訳出(本邦初訳)したものであり,本書で明らかにされた色のトーンなる概念は,本研究で必須の知覚色の体系に重要な役を演じる.
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