多視点画像から身体の姿勢の自動推定を行った.また,この姿勢推定法を研磨作業の動作測定へ応用した.さらに,身体の一部である手・指の姿勢推定も試みた. 姿勢が既知の身体に対し多視点カメラ画像のライブラリを用意し,身体クエリ画像を画像ライブラリと照合させることにより姿勢を推定する.網羅的な照合は計算量が膨大になるため,画像ライブラリを視点クラスに,さらに姿勢クラスにあらかじめ分類しておく.クエリ画像のクラス識別により効率化を図ることにした.このとき,背景が含まれると識別誤りを起こすので,差分法により背景を除去しておいた.視点クラス,姿勢クラスの分類は,正例に対し負例の数が多いため非対象AdaBoostを用いた.手足を左右対称に広げた場合,身体前後のカメラ視点からは類似した輪郭の画像が得られ,間違った視点クラスに分類される可能性がある.そこで,顔検出により身体の表裏を判別した.このオプションを加える事によりほぼ完璧な視点分類が可能となった. 画像ライブラリから,視点・姿勢クラス分類により照合した画像の姿勢はサンプルの一つであるため,クエリ画像の姿勢と必ずしも一致しているとは限らない.そこで,サンプル画像の体軸を初期位置とし,チャンファーマッチングによる逐次修正によりクエリ画像の体軸を求め,姿勢クラス内の姿勢の統計的性質に基づき,体軸に照合する姿勢の3次元推定を行った. 前年度に精密化を行った姿勢推定法を使って,航空機の翼を研磨している作業の動作測定を行った.翼により身体胴体部が隠されていても,提案手法は有効に測定できることを確認した. これまでは,主に腕や脚の動きを測定してきたが,この研究を発展させる方向として,さらに細かく手や指の動作測定も試みた.手や指も多関節構造なので手法の拡張は容易である.刃物の研削工程における作業動作の測定に対し,拡張した手法が使えることを確認した.
|