社会問題となっているC型肝炎ウィルスに起因する肝癌を対象とした癌診断システムの開発を目的とする。このことを可能とするため、本研究では超高次元で少数サンプルの状況下においても実行可能な特徴選択法を確立し、それに基づいて癌の多様性の中に潜む普遍的な、肝癌の診断に役立つ標的因子群を発見する。さらに標的因子群を用いて肝癌の診断システムを開発する。 21年度においては、サンプルの収集と標的となりえる因子の探索を行った。まず、サンプルに関しては、C型肝炎ウィルスに起因するHCC患者とC型肝炎の非癌患者を診断システムの設計のために用いる訓練サンプルとして、また診断システムの診断性能を評価するための独立なテストサンプルとして、それぞれ収集した。システムの診断性能を正しく評価するため、訓練サンプルはテストサンプルと完全にブラインド化して、さらに診断システムの汎化性を得るため訓練サンプル数は十分に、また評価に用いるテストサンプルは施設間の影響も考慮に入れて複数施設から収集した。 次に候補因子を医学的観点とマイクロアレイ解析から絞り込み、独自の特徴選択理論により9つの因子を候補として選定した。それらは、既存の肝癌マーカーと肝癌に特異的なメチル化遺伝子であった。 さらに診断システムの要である識別器の性能向上のための予備的検討も行った。具体的には、入力データに対する変数変換による診断性能の改善、及び識別器のカットオフ値の最適化に関する予備実験を行い、診断性能の改善の感触を得た。
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