研究概要 |
社会問題となっているC型肝炎ウィルスに起因する肝癌を対象とした癌診断システムの開発を目的とする。このことを可能とするため、本研究では計算上実行可能な独自の特徴選択法を確立し、それに基づいて癌の多様性の中に潜む普遍的な、肝癌の診断に役立つ標的因子群を発見する。さらに標的因子群を用いて肝癌診断システムを開発する。 22年度にいては、21年度に候補とした9つの因子の中から標的因子群の同定を行った。9つの候補因子の組み合わせを、その因子数を変えて網羅的に調べた。探索の結果、診断性能に最も寄与する4つの因子を標的因子として同定した。同定した4標的因子は2個のメチル化遺伝子、2個の肝癌マーカーであり、従来の肝癌マーカーとメチル化遺伝子とが相補的に肝癌診断に寄与することが判明した。これら標的因子を用いて識別器の設計と評価を行った。識別器の設計においては21年度に行った予備的検討の成果として、変数変換による正規化、及び識別器のしきい値最適化の2点を導入した。変数変換にはパラメータの最適化されたべき変換と対数変換を用いた。識別器にはロバスト性の高いFisher線形識別器を用い、そのしきい値の最適化も行った。 設計に用いた訓練サンプルは164症例、これらとは完全に独立な4施設からのテストサンプル258症例を用いて診断システムの設計と評価を行った。テストサンプルに対する診断精度は、感度73.2%,特異度87.7%、正診率81.4%であった。特筆すべき成果としては、小さいサイズの肝癌(HCC≦2cm)の診断にも本システムが適用可能である見通しを得たことである。
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