本研究ではC型肝炎ウィルスに起因する肝癌を対象とした癌診断システムの開発を目的とする。このため、本研究では計算上実行可能な独自の特徴選択法を確立し、それに基づいて癌の多様性の中に潜む普遍的な、肝癌の診断に役立つ標的因子群を発見する。さらに標的因子群を用いて肝癌の診断システムを開発する。 21年度と22年度は、実データを用いた認識実験を行い、標的因子群の発見とそれらを用いたプロトタイプの肝癌診断システムの設計を行った。これを踏まえて23年度はシミュレーション実験により診断システムの評価とその改良を主として行い、本システムの有用性を検討することを目的とした。特に誤診断されたサンプル(症例)を臨床面からも含めて分析し、トランスレーショナル・リサーチとして研究成果の臨床応用への検討を行った。 具体的には23年度では、22年度までに独自の特徴選択理論により発見した標的因子群と予備的検討を踏まえた識別理論によるプロトタイプの肝癌診断システムの評価とその改良を行った。Fisher線形識別器の改良に関しては、入力データの変数変換として、べき変換と対数変換を導入した。更に識別器のカットオフ値の最適化について感度と特異度の両面から改良した。特に誤診断の分析には可視化手法を用い、人間の直感を活用したアプローチを採用した。標的因子群には既存の2肝癌マーカーと2メチル化遺伝子からなる4つの因子を用い、更に標的因子群の肝癌発症との因果関係など、医学的な意義も検討した。また識別器にはロバスト性の高いFisher線形識別器を用いた。標的因子群同定に関する特許出願も行い、事業化へむけての知財管理も行った。
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