研究課題
本研究は、夜間における歩行者を巻き込んだ重大事故の防止と運転支援を最終目的として、可視光カメラを用いたナイトビジョンの実用化に向けて必要な要素技術の開発を目的とする。しかし、可視光カメラで普通に撮影したのでは、ヘッドライトなどの強烈な光源の影響を除去することは難しく、現状では遠赤外線カメラを利用したシステムが主流であるが、カメラ自体が高価であることから、一部の高級車にしか搭載されておらず、広く普及するには至っていない。コスト以上に問題なのはシステムの信頼性にある。ここでは、液晶マスクおよびチューナブルフィルターを用いて高輝度光源の影響を除去し、傾斜計を利用して画像上の消失線を高速・高精度に求め、全体としてロバストな認識システムの構築を目指す。システムの認識結果をどのタイミングでどのようにドライバに伝えるかも重大な課題であり、人の注意および画像の顕著性の観点からも解明を行った。歩行者検知の前処理として、対向車のヘッドライトや逆光の太陽、その他の高輝度光源が存在する場面で、その影響を取除き、鮮明な入力画像を得る方法を開発するために次の2つのアプローチを試み、その効果を確認した。また、歩行者検知には消失線の利用が非常に効果的なことが分かっている。従来は、消失線は画像処理により求めていたが、ここでは傾斜計から得られる傾斜角を用いて高速・高精度に求め、マルチスリット法により歩行者検知を行う手法について実験を行いその有効性を確認した。特に、車載を考慮したときに振動や急激な角度の変化に対しては、画像処理で消失点を求める方法に比べて計算時間の点で優れている。マルチスリット法は、画像上で歩行者の居る可能性がある位置を設定することで検知精度を上げようとするものであり、1台のカメラで距離推定も同時に行える特長がある。
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