平成21年度に実施した内容を下記に記載する。 (1)調査事項として、伝統音楽(津軽・南部三味線)の現有音階表記方式、(2)検討事項として演奏者に優しい三味線譜面(音の高低の表記、音の長短の表記、楽器特有な制約事項)の構築・考案などを掲げ、三味線演奏に関する各種条件をH22年度に開発する自動採譜ソフトに反映する事を目的として研究を実施した。(3)更に音源発生器としてエレクトリック三味線を開発した。以下、具体的内容を記載する。 (1)、(2)の調査及び検討事項: ・1弦あたり18段階に分解される音程("つぼ")の周波数解析 ・スペクトル周波数解析機を使用して、アナログ音のデジタル信号化の実現 ・開放弦と同音他弦音との差別化(同音異弦音の区別) ・三味線譜面から西洋譜面への変換、及び西洋譜面から三味線譜面への変換や対応の調査と実現方法の検討 これらの調査により津軽・南部三味線の音階が、全て弦単位の数字表記可能である事を確認し、平成22年度以降に構築する自動採譜ソフトの予備段階とした。 (3)の開発事項: フレットレス音源発生器としてエレクトリック三味線を構築した。その具体的な内容は、 ・弦単位にピックアップマイクロフォンを装着し、単独音階抽出の可否と混信の度合いを明らかにした。 ・共振を防止対策として、胴の部分の皮を取り払いスケルトン仕様にした。 ・ノイズ除去装置として、ノイズリダクション機能を搭載したプリアンプをエレクトリック三味線に内臓し、弦単位の音階抽出を実現した。 ・ピックアップマイクロフォン装着位置の適正化を目的とし一番感度が良く独立音が収録される位置決めを行った。 以上のように、平成21年度は当初の目的通り、I.伝統邦楽楽器の採譜に関する音楽的調査事項は終了し、II.同フレットレス邦楽楽器即ちエレクトリック三味線の構築を実現した。
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