研究概要 |
本研究では,奥行き感のある映像とそれとの関連性が強い音を用い,様々な視聴覚相互作用についての検討を行っている.当該年度は,主に映像刺激と音刺激の遅延時間が,映像の奥行き知覚に与える影響について検討を行った. 実験において,視聴覚刺激には,お互いの関連性が強く,奥行きを感じやすいものとして,太鼓を叩く人のムービーとその時の打撃音を用いた.映像刺激は,奥行き感を感じやすい長い直線道路で,ハイビジョンビデオカメラを用いて撮影した.カメラと対象物(太鼓を叩く人)との距離は,5,10,20,40mとした.音声刺激については,至近距離で録音した打撃音に各距離におけるインパルス応答を畳み込み,さらに音圧レベルを調整したものを用いた.被験者への提示は,アンプを介して,ヘッドホンから提示した.被験者には,各距離での映像に対して奥行き感を-40%~40%まで変化させ,音圧レベルを基準値の-12~12dB,遅延時間を基準値の-8~8F(1F=1/30s)として,様々な組み合わせで,視聴覚刺激を提示した.被験者には,実験中は映像刺激を注視し,刺激提示後に,実験刺激の印象について,音刺激の大きさに対して,太鼓の映像が「大きい」もしくは「小さい」のどちらかを回答させた. 本実験に得られた結果の解析により,主観的等価音圧レベルおよび主観的同時点を算出し,時間遅延に対する等価的な奥行き感を算出した.その結果,遅延時間が増加するに従って,等価的な奥行き感は増大する,すなわち,音が遅延するに従い,映像を遠くに感じる傾向があることがわかった.また,時間遅延の影響は,遠距離の方が大きくなる傾向が見られた.
|