研究概要 |
本年度は,主題である設計方法論構築の前段階として,愛着の意識構造解明を目的として以下の検討を行った。 愛着を抱いている対象物(モノ)を事例として収集し,大別して二つの方向から検討を行った。一つ目は,モノが有する材質感を解明する目的で,デジタルマイクロスコープを用いて,その表面性状に対するFFT(高速フーリエ変換)解析を行い,1/fゆらぎの有無を検討した。二つ目は,[モノの属性,モノに対する感情や印象,モノの構成要素に対する満足度,モノとの関係構築]という観点から評価項目を作成し,アンケート調査を行った。アンケート調査に際しては,ヒトの志向特性(生活意識・モノに対する姿勢)に着目し,[感情志向,流行志向,消費志向]を明らかにする項目を設定すると同時に,[デモグラフィック・ジオグラフィック・サイコグラフィック]属性も検討に加えた。 アンケート調査から得られた内容は,(1)因子分析法による潜在変数(愛着の構成要素)の特定,(2)共分散構造分析による潜在変数間の因果関係・相関関係の構造化,(3)クラスター分析によるヒトの志向特性体系化を試みた。 一方,愛着という現象を感性情報と定義し,愛着が有している評価内容を階層構造化[感覚(生理的レベル)-感覚特性(心理的レベル)-感性(認知的レベル)]し,愛着の意識構造を解明した。 全体を総括すると,表面性状から愛着に深く関わる材質感を解明するためには,表面性状の定量的解析手法をさらに検討する必要があり,次年度の課題として残された。したがって,研究成果を発表する段階にまでは至らなかった。
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