研究概要 |
本研究では,映像観視時の生体信号の計測に際して,視覚刺激に対する,視覚応答と生体信号の応答について可視化を行うとともに,それに基づきモデル化することを検討することを目的としている. 本年度は,視覚処理のモデルの構築と生体信号の計測およびモデル化について,下記のように研究を実施した.映像視聴時の生体信号として,脳波を対象とし検討を行った.まず,微弱電位である脳波での特徴波形を記録するために,波形抽出のための信号処理手法の検討を行った.次に,映像刺激には,これまで検討してきた心拍変動を対象としたものと同一コンテンツを用い,プラズマディスプレイを用いて,2D視聴時,3D視聴時の計測を行った.映像視聴と同時に主観評価値を記録し,脳波記録と主観評価値の関係について検討を行い,脳波利用の可能性を検討した.さらに,音響信号による生体信号への影響を確認するために,音響信号聴取時の脳波の計測を行った.より多くの生体信号との組み合わせ,あるいは特徴抽出処理の改善が望まれる結果であった. 一方,映像視聴時の生体信号応答のモデル化を利用した応用例として,ビデオ映像に対して,映像アーカイブ作成に必要なシーンの特定を,生体信号(心拍)により行う実験を行い,良好な結果を得た. また,独立成分分析による基底を用いて,心拍変動を支配する自律神経系の機能をモデル化するための心拍の生成モデルの妥当性の検証を行った.合成信号の入力に対してネットワークの出力系列が独立になるように学習を行った際に,ネットワークで形成されるフィルタバンク(独立成分分析による基底群)の中心周波数とバンド幅の周波数特性が,予測される特性と類似する結果を得た.
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