研究概要 |
本年度は形態測定学の標識点データを自動的に取得する方法の開発を行い、標識点データを自動取得した場合の、標識点位置の妥当性の評価に関する提案を行った。形態測定学は形状を標識点と呼ばれる点の集合で表わし、形状を統計学的手法で分析するための方法である。大量の標識点データを自動で取得できれば、複雑な形状を多変量として表わすことができ、感性分析による形状差と視覚的自然さとの関係分析に役立てることが出来る。ある点の集合が標識点データであるための条件の一つに、「それぞれの対応する点は、各対象形状の同じ部位に配置されていること(頂点位置の相同性)」ということがある。従来は主に手動で対応点を設定する必要があった。しかし、3次元車体形状のような滑らかな曲面の組み合わせで構成されている形状の場合、必要となる点が膨大となり、手動で設定することは事実上困難である。 本年度の研究では、3次元車体形状を対象とし、「相同領域分割」という概念を導入し形状を構成する大まかな面に分割することで、形状の同じ部位を構成する面ごとに対応点の位置を自動的に取得する方法を開発した。この方法により、上記の条件を自動で満たすことができ、1,500点以上の標識点データを1分強で作成することが出来た。また、標識点データの妥当性評価に関しては、現在のところデータ作成者の目視による方法のみで、明確な基準が提案されていない。一方で、大量の点の位置を目視で評価することは困難である。そこで、同じ対象形状群から手動で取得した少数の標識点により表わした基準標識点データとの相関を調べることで、大量の標識点を使ったデータの妥当性を評価する方法を提案した。この評価法、および本研究法により作成された標識点データは、目視による頂点位置の相同性を確保した基準標識点データと同程度の頂点位置の相同性を持つと期待できる。
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