21年度の研究成果を基にして、視覚的自然さを客観的に評価するための考察を広範に行なった。その中の一つとしては、解像度の異なる形状モデルに対して形状差の比較が可能な形状モデルの構築についての調査と考察が挙げられる。これは異なる解像度(異なる頂点数)で表現された形状差の比較は既存の形状分析法である形態測定学的方法では不可能であるためである。この問題に対して、メッシュラプラシアン行列の固有値分解によって得られる固有値と固有ベクトルに注目し、形状差のパラメータ化への応用について調査を行った。有限要素モデルに基づくメッシュラプラシアン行列の固有値列はShape-DNAとも呼ばれ形状探索などに応用されている。しかし、Shape-DNAは不可逆なパラメータ化であるため、サンプル間の形状差のパラメータ化はそのままでは不可能であり、付加情報を与えるなどのさらなる検討が必要である。 一方、異なる解像度の形状モデルの形状差の比較方法として、CG分野の技術であるDisplacement mapを使った多重解像度表現が可能な簡素化メッシュモデル作成方法を開発した。この方法は、詳細なメッシュモデルから、簡素化メッシュモデルと詳細形状復元のためのDisplacement mapを同時に作成し、多重解像度表現可能はメッシュモデルを作成するものである。この形状モデルによって、一つの形状に対しては詳細形状の情報が含まれているDisplacement mapの分析により解像度の変化による形状差の比較が可能になり、解像度の違いによる視覚的自然さの評価に応用可能であると考えられる。また、異なる形状間で同一の簡素化メッシュモデルを共有することが出来れば、異なる形状間での異なる解像度による形状差比較も可能であると考えられる。
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