研究概要 |
申請者は、これまでにバーチャルリアリティ技術を用いて人間の触知覚の錯覚現象の再現を実現したが、そのメカニズム及び発生条件が解明されておらず、錯覚が生じるときに人間の上肢運動がどのように影響されるかについて明らかになっていない。本申請は、これまでの研究成果を発展させるものであり、バーチャルリアリティ技術を用いて視覚と力覚の錯覚現象のメカニズムと発生条件などの基礎問題を検討し、さらにと上肢運動における身体感覚器の錯覚現象の影響を明らかにすることを目的とする。本年度の主な結果としては、人間の視覚錯覚と運動の関係について注目し,ミュラー・リヤー錯視をビジュアル的な刺激として被験者に呈示した場合,脳の認識が人間の運動にどのように影響を及ぼすかについて検証した.被験者が表示されたミュラー・リヤー錯視の3種類の線分をなぞりながらその感覚を記憶したのち,覚えた感覚でリーチング運動を行う.その結果,錯視情報は人間上肢のリーチング運動の計画に多大な影響を与えていることを確認した.また,視線計測装置を用いて運動と錯視の関係について新しいアプローチを行った結果,運動を決定するときには直前までの反復運動の記憶だけでなく,表示されていた図形そのものを脳内で使用しているのではないかという知見を得た.この結果が今後の研究展開に非常に有用な手係りを与えた。また,申請者は遠隔力感覚通信時に人と人の力のやり取りに着目し,遠隔地の人とコミュニケーションを実現するときのマスタスレーブシステムのサーボ系と操作者の力認識の問題について調べた.来年度に視覚錯覚の刺激による上肢運動と力感覚の関連について検証し,そのメカニズムの解明を進めていく.
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