研究概要 |
競合連想ネットに統計学的学習法を適用して性能を向上させ,その工学的応用について検討することを目的とした.本年度は最終年度であり,課題(1)~(4)についての成果は以下のようにまとめることができる。 (1)競合連想ネットの統計学的学習法の構築とその解析:バギング法とベイズ法を統合することにより性能向上できる場合を検討し、バグ数が非常に大きい時(5000以上)に性能向上が期待できることを示すことができた。またバグブースティングの一手法を開発して検討し、そのいくつかの性質を明らかにすることができた。 (2)非線形時変プラントの制御への応用:シリコンウエハ洗浄液の温度制御で得られた成果をもとに,非線形プラントとして,ロープ長や荷重が変動するクレーンの制御に適用し,よりロバストな制御手法として一時差分と複数の競合連想ネットを切り換える制御手法の提案と解析を行い、汎用性や有効性を示すことができた. (3)音声時系列の区分的線形モデルによる解析と認識への応用:競合連想ネットのバギング学習結果を用いる手法と単純ベイズ予測法を融合した多段認識法を構築し,その性質と有効性を示すことができた. (4)競合連想ネットにより複数の距離画像から区分的平面を抽出し各距離画像を順次位置合わせするとともに,位置合わせの累積誤差を小さくする手法としてパーティクルフィルタを用いる手法とLOOCV(Leave-OneImage-Out)クロスバリデーションを使用する手法を提案し、それらの性能評価を行い、従来より汎用性の高い手法であることを示した。 なお、上記課題(1)においては、統計的学習の汎化能力の推定や実現に重要であると考えられているdiversity(多様性)の尺度として、従来の分散(variance)よりも歪度(skew)や尖度(kurtosis)が有効であることを示唆する結果が得られ、その根拠となる理論的枠組みの見通しもつけることができた。この新しい知見に基づいて、今後、本研究課題をさらに進展させた新しい課題を検討中である。
|