グラフォートマトンは、構造を変化させるルールと、ルールの適用を制約する構造との間の相互作用を記述する数理モデルである。これは静的な格子構造の上での格子点における状態変化を扱うセルオートマトンを、動的なグラフ構造に拡張したものといえ、より豊かな表現力をもつ。ここでは、各ノードが内部状態をもち、他の3個のノードと隣接するように制限されたグラフ構造を想定している。また、各ノードに接続しているエッジ間に循環順序を仮定する。今年度は、単純な場合における自己組織的な振る舞いとしてクラスタリングに関する数理的検討を行った。クラスタ間の相互作用を検討することは、階層的な自己組織化のために、グラフの発展過程をメゾスコピックに捉える点で重要であると考えられる。ここでは、同一の内部状態をもつ極大連結ノード群を一つのクラスタとする。グラフの発展は、任意に選択したリンクに対してルールを適用することを繰り返すことにより行われる。ただし、各ノードの取り得る内部状態は2状態とし、ノード数を増減させないルール2種類を想定する。これらのルールは、局所的なノードの配置によって、クラスタ数に対して異なる影響を与える。それぞれのルールについて、ノード数12から1140までのいくつかの初期グラフからの発展過程をシミュレートし、一方のルールではクラスタ数は増加、他方では減少していくことがわかった。ただし、初期状態の影響や得られたグローバルな構造については今後さらに検討が必要である。
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