グラフオートマトンは、構造を変化させるルールと、ルールの適用を制約する構造との間の相互作用を記述する数理モデルである。これは静的な格子構造の上での格子点における状態変化を扱うセルオートマトンを、動的なグラフ構造に拡張したものといえ、より豊かな表現力をもつ。ここでは、各ノードが内部状態をもち、他の3個のノードと隣接するように制限されたグラフ構造を想定している。また、各ノードに接続しているエッジ間に循環順序を仮定する。今年度は、単純な場合における自己組織的な振舞いとしてクラスタリングに関する数理的検討を進めた。ここでは、同一の内部状態をもつ極大連結ノード群を一つのクラスタとする。グラフの発展は、任意に選択されたリンクに対してルールを適用することを繰返すことにより行われる。ただし、各ノードの取り得る内部状態は2状態とし、ノード数を増減させないルール2種類を想定する。特に、外乱としてノードの状態がランダムに変更されることを想定して、主として安定性について検討を進めた。変更の割合を様々に変化させてシミュレーションを行い、クラスタ数の変化を調べたところ、前年度に得られた挙動はこのような外乱のある場合にも安定的な振舞いを示すことが確認できた。また、状態を考慮しない場合のこのような枠組みの構造的な性質を検討し、上述の構造書換え規則を用いると、状態を持たない平面的な3正規グラフが二つ与えられた時、ノード数が同じであれば、一方から他方に書換えが可能であることを示した。具体的には、そのような任意のグラフから、ノード数の同じ環状梯子グラフに書換え可能であり、また、逆向きの書換えも可能であることから導かれることを示した。
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