研究概要 |
本研究は「食の安全」を守りかつ「水産業(特に,水産物卸売市場)の技術.技能の空洞化」を防ぐ手段・手法を提案することを目的として,"鮮魚の熟練的品質評価モデルと魚肉鮮度(K値)-魚体体表の色彩の数理モデルとを組み込んだ品質推定システム"のプロトタイプを構築するものである。 平成23年度は,魚市場の競り人による彩度の低い魚種(マアジ,サワラ,カワハギ等)及び市場が指定する重要魚種(天然マダイ等)に対する外観評価と,下関老舗フグ仲卸業者のふぐ処理師よるフグ類(トラフグ,マフグ等)の身欠き品に対する品質評価を対象として解析,モデル化及びモデルの高精度化を図った。併せて,シロサバフグ(鮮魚)とトラフグ(身欠き品)を対象として魚体体表の色彩から魚肉鮮度K値を推定する数理モデルと競り人やふぐ処理師の品質評価を推定するファジィ推論モデルを作成し,これらのモデルを組み込んだパソコンと色彩計とから成る品質推定システムのプロトタイプを構築した。 競り人による鮮魚の外観評価については,魚体全体の彩度の低下に伴って品質評価のポイントが頭部寄りから尾鰭方向に移行することを確認した。また,ふぐ処理師による品質評価のポイントは腹部周辺に集中すること,品質評価では魚肉鮮度と身欠き処理の丁寧さの両面を重視していることを明らかとした。 構築した品質推定システムによる推定精度は,シロサバフグ(鮮魚)では競り人の評価(5段階)とシステムの推定結果が一致した割合が95%程度,魚肉鮮度K値の推定誤差は±10%以内となった。トラフグ(身欠き品)ではふぐ処理師の評価とシステムでの推定結果が一致した割合は85%程度,魚肉鮮度K値の推定誤差は±15%以内となった。システムの推定結果が魚体の彩度の低下に伴って悪くなる傾向を示したが,試料数を増してシステムに組み込むモデルを改良ことで精度の向上が期待できるものと判断した。
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