研究概要 |
本研究の目的は,学習情報センターにおいて学校図書館担当者(司書教諭,学校司書)が専門的な職務を遂行するために必要な職務の実践的能力(コンピテンシ)とは何かを実証的に明らかにすることである。本研究の学術的背景としては,筆者が連携研究者として参加した科研費基盤研究(A)「情報専門職養成をめざした図書館情報学教育の再編成(LIPER2)」(2006~2009年度)で実施した情報専門職(学校)の職務に関する研究がある。しかし,LIPER2の研究では情報専門職(学校)の職務と専門的スキルや態度の関係性が十分に解明されなかった。本研究の目的はこの点に着目したものである。 本年度の研究実績は,大きく(1)学校図書館に関する国内外の文献の収集と分析と(2)学校図書館職務についての聞き取り調査の2つの方向から実施した研究からなる。(1)の研究では,収集した文献を基に文献レビューを行い雑誌論文として投稿した。また,米国の図書館担当者の職務構成を明らかにするために,2009年に改訂された米国学校図書館基準(2分冊)の翻訳作業に参加し,翻訳書を刊行した。(2)の研究では,小中学校の図書館担当者と高い専門的スキルが求められる学校図書館支援センター・スタッフに着目し,その職務内容と必要とされるスキルについて聞き取り調査を実施した。今年度の調査は,松江市の公立小・中学校及び学校図書館支援センター,桐生市の私立中等学校,新潟県立高校,長岡市の公立中学校,倉敷県立高等学校,豊橋市立小学校及び学校図書館支援センターなどに勤務する司書教諭,学校司書,支援センター・スタッフである。これらの調査結果をまとめ報告書を作成した。 学校図書館の職務に関する研究では,質的調査の積み重ねが必要であり,今年度の研究実績から,研究の一定の進展が見られたといえる。
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