研究概要 |
本研究の目的は,学習情報センターにおいて学校図書館担当者(司書教諭,学校司書)が専門的な職務の遂行に必要な職務の実践的能力(コンピテンシ)とは何かを実証的に明らかにすることである。 本年度は,大きく(1)学校図書館,学校図書館支援センターへの訪問調査,(2)学校図書館のアンケート調査を実施した。(1)の調査では,市川市学校図書新センター担当指導主事,さいたま市立図書館学校図書館支援センター担当者,私立中高一貫校の学校図書館担当者へのインタビュー調査と資料収集を行った。これらの機関は,全国的に見ても学校図書館の活動や読書支援活動を活発に展開し,多様な支援サービスを実施している。これらの学校図書館担当者の職務と能力・意識の関係を明らかにすることは,その専門性を解明するうえで重要な示唆を与えるものであった。また,アンケート調査については,兼任司書教諭の職務内容の現状についての調査と学級文庫の学校図書館の支援についての調査を共同で実施した。これらの調査は学校図書館担当者の職務の現状を明らかにするために実施したものである。そして,これらの調査データのまとめと分析を行った。また,本研究テーマとの関連で教職員の専門性の向上に重要な役割を果たしている教育センターにおける教員研修について共同で調査し,職員養成の在り方について論文にまとめた。また,これまでの研究において学校図書館の担当者の職務の中でも,教育的役割や教員サポート機能について着目して調査を行ってきたが,そうした成果を踏まえて教育課程における司書教諭の役割について論考をまとめたり,講演等を行ったりして研究成果を社会に還元するように努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学校図書館調査において,国内の調査についてはおおむね順調に進展しているが,研究計画の中で予定した米国の学校図書館調査については,やや遅れている。その理由は,校務との関係によるものであるが,主に学部の入試の実施委員になったため年間を通して入試事務が入り,米国の調査のための日程調整がうまくいかず訪問調査を次年度に延期したことにある。しかしながら,次年度において十分遅れを取り戻すことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,まず学校図書館の訪問調査を継続して行い,学校図書館担当者の専門的職務の現状についてのデータを収集し,必要に応じてアンケート調査も併せて実施する。次年度の調査では,新たに学校図書館における教育の情報化に着目し,情報端末や電子書籍等の活用とそれに対応する学校図書館担当者の職務を調査対象として含めていく。また,これまでの文献調査を踏まえ,米国の学校図書館専門職員の職務内容についても可能な限り調査を行う。 そして,次年度は研究プロジェクトの最終年度に当たるため,上記の小中学校図書館に関する文献調査や訪問調査等の結果をまとめ,最終報告書もしくは研究論文を作成する。報告書・研究論文では,当該学校図書館の運営の在り方と職務の関係,調査対象地域における学校図書館担当者の主要な専門的職務の実施内容とそれらの実施に必要なコンピテンシについて分析・考察する。
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