本研究の目的は、法廷弁論の教育支援のために、法廷弁論のシミュレータを開発すること、このシミュレータによって実際に利用される弁論データベース(以下弁論DBと記す)を構築すること、及び、その過程で得られたノウハウや弁論DBの分析により、法廷弁論の教育方法に対する理論的基礎を与えることである。本年度も実施計画に沿って、(1)弁論記録の分析作業として、新たに実際に授業で行われた弁論記録の分析を行い、また、口頭弁論についても、映像記録から、テキストに起こし、さらにデータベース化を行った。(2)教育事項の抽出と弁論シミュレータの定義に関しては、弁論記録分析の結果より、弁論の中に証拠提示を必須とするような指導が重要であり、そのため、学生の弁論の準備段階での作業支援のシステム(Arg PLAN)も開発して一定の効果をあげた。また、立証時の証拠提示と同時に、相手方の反論の仕方のパタンや論理的な位置付けが重要なことが分かったため、これも論文としてまとめ、授業の中でもそれを応用し、学生の理解に供することができた。(3)弁論シミュレータについては、仕様検討が続いているが、そのためのプロトタイプの一貫として、先に述べたArg PLANの利用分析によって設計が進んだ。(4)弁論DBの構築については、弁論の記録をXML化し、スキーム設計の元になるような分析を行った。特に、法廷弁論を含む論争や議論に関する国際的な第一人者であるD・Waltonの論争スキームの全パタンを独自にデータベース化し、本研究のDBスキーム設計の参考にした。論争スキームでは、クリティカル・クエスチョンが特徴であり、それが反論に応用できる。(2)でも述べたように、研究の進行に伴って、要するに反論の構成が重要である。
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