本研究では法廷弁論の教育支援のために、法廷弁論の自習システム(=シミュレータ)を試作すること目指し、そこで用いられる弁論データベース(以下弁論DBと記す)の構築も目指す。この過程で得られたノウハウや弁論DBの分析により、法廷弁論の教育方法に対する理論的基礎を与えることが目的である。理論的基礎については既に昨年度論文化しており、本年度はその検証と試作システムの改良を行った。詳細には実施計画の順に次の通り。(1)弁論記録の意味的分析を行った。自然言語解析を行うには本年度はデータが少なく有意な結果が見られなかったため、意味的な分析を集中して行った。概ね、既に発表している理論通りの結果であった。すなわち、当該法律要件に対応する各主要事実をルートにした争点整理と必ず証拠引用を行わせる方式によって、学生実習では、弁論がかみ合い、無駄な議論もほとんどなくなった。(2)試作システムの要求定義を再検討した。現実的な設計を行って、現行の実践的検証の場である授業進行に即したものとした。これは学生のエラーに対して、警告を行ったり、成績を示したりする機能を既に発表されている論争掲示板システムに付加した形で実現するような設計である。(3)試作システムの改良を要求定義に従って行った。実際には現実的な設計としたため軽微の改良で済んだ。(4)弁論DBの構築については、蓄積された弁論データの整理の他に、Waltonの議論スキームとして提示している全パタンをデータベース化してWeb上で利用できるようにした。
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