これまで感情の時間変化を明らかにするために、感情喚起刺激の提示時間を操作して、感情の主観応答を検討してきた。平成23年度は、刺激が誘引した感情状態に対して、新たな感情喚起刺激をプローブとして提示した。 実験1では先行画像として快、不快及び中性画像のどれか一つを提示中に、新たな画像を後続画像として提示した。先行画像がもたらす感情の喚起、持続、消失の各フェイズ(0.2s、8s、20s)において後続画像を提示することで、生じる感情応答を提示フェイズ間で比較した。これまでと同様にノブ型装置を用いた主観感情評価の時間変化を検討してみると、先行画像と後続画像刺激が同一条件の場合は、後続画像に対する主観評価(回転量)が抑えられていた。これは後続画像刺激に対する慣れによるものと考えられた。先行画像と後続画像が異なる場合は、先行画像の快画像の提示時間が0.2s条件において後続画像に対する不快評価が低下した。このことは、快感情が十分に認識できる場合に不快刺激が与えられると、その際に生じる不快感情はリバウンド現象のように増強する可能性を示唆した。 続いて、実験2では時系列的な感情変化に注目して、感情S1-S2パラダイムを感性情報の評価に用いることを試みた。感情S1-S2パラダムではS1(手掛り刺激)とS2(標的刺激)の2つの刺激を系列として提示した。この課題は標的刺激が感情を喚起する刺激であり、手掛り刺激は到来する標的刺激の感情内容に関する暗黙の期待を導く刺激である。この刺激パラダイムに伴う刺激先行陰性電位(SPN)や後期陽性電位(LPP)を計測することで、感情画像の予期や期待に関連した脳波活動を検討した。その結果、SPNは到来画像への顕在的な期待を反映し、LPPは期待と到来画像との整合性を反映することを示唆した。
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