研究概要 |
本研究では,動的な類似尺度の利用により複数の対話をグループ化し,共通するパターンを見出すことに取り組む.話題が多様かつ場面ごとに有様が異なる非定型な構造を持つような複雑な対話は,これまで類似性の定量的な把握が困難であった.そこで,話題が多様である対話を対比させるために,話者のスタイルを反映する動的な特徴として,カテゴリ化された行為の遷移傾向を利用する.また,構造に非定型性のある対話間の関係を捉えるために,対話の進行状況によって類似尺度中の各特徴の重みを場面に応じて変化させる.以上により,現実社会の複雑な対話を対象としたパターンの発見を可能とする. これまでに,頷きに代表される頭部運動に焦点を当てて分析を進めてきた.頭部の運動をビデオデータの観察により,人手でコーディングすること,加速度センサーにより客観的な数値データを得ること,の2点に取り組んだ.これらのデータから,カウンセリング対話の進行に伴って,一定の規則性をパターンとして抽出するために,視覚化を行った.その結果,対話パターンが,カウンセリングの段階が変化することと関連していることが明らかになった.また,カウンセラーの対話技能と,パターンが形成される原因が異なっている可能性も示唆された.今年度は,これらの結果を論文としてまとめるとともに,研究をさらに発展させる上で必要となる,対話の構造を捉えるための新たな分析単位やデータ収録環境について論議した.
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