研究課題
言語の習得には、聴覚的に連続な音声に含まれる単語の切れ目を見つける必要がある。視覚的な言語習得の場合においても、視覚文字列、パタンの分節化が重要である。これまでに行ったERP研究では、連続系列における聴覚分節化及び視覚分節化を反映し、学習の達成度と強く相関する事象関連電位(ERP)成分(N400)を発見した(前年度成果)。本研究では、連続視覚信号の分節化(知覚学習)及び運動学習の統合過程をオンラインで評価するため、脳波計測に加え、時系列反応時間(SRT)を取り入れた、系列の運動学習課題を実施した。実験では、有限状態文法規則に従って生成された系列刺激が、音符画像として個別にTVモニターに呈示され、被験者は音符に対応するピアノキーをできるだけ速く押すというSRT課題を施行した。1センテンスには4-6チャンク(単語)が含まれ、各チャンクは3つの音符から構成された。10個のセンテンスの2回繰り返しが1ブロックとして、計9ブロックの学習が行われた。その過程で、反応時間(RT)とERPの記録を行った。その結果、RTは学習ブロックの進行に伴って短縮した。また、RTはチャンクのオンセット(第一音符)では遅くなるものの、チャンク内(第二、第三音符)及びセンテンス末端では短縮を示した。ERPでは、同じくチャンクのオンセットに対し、チャンク内の音符に比べ、刺激呈示後300-400ms区間により大きな陽性電位P3が観察された。またその電位が学習ブロックの進行につれ徐々に大きくなった。このERPのP3振幅がRTと有意な相関を示した。研究結果は、RTとERP成分は、分節化及び文法学習の進行過程を定量的に反映していることを示唆する。本研究では、系列信号の分節化及び学習進行過程における感覚運動統合学習過程を行動-生理学的指標より評価できた。
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Neuroscience Research
巻: 67 ページ: 334-340