研究概要 |
高齢者の知的ボランティア活動による認知機能への中長期的効果を検討するため,子どもへの絵本の読み聞かせを通した高齢者と子どもの世代間交流を主とする学校ボランティア事業「りぷりんと」に継続参加する高齢者の認知機能を検討した。今年度は,平成18年度から開始した3期生75名の5年目の評価と,新たに平成16年度から開始した1期生86名の7年目の評価を実施した。対象地域である全国3地域において、読み聞かせボランティアに参加する高齢者(介入群)と健診のみ受診する高齢者(対照群)に対し、初年度から継続している記憶,知識,判断,言語,速度に関する個別認知機能検査(約50分)と日常の認知活動状況や記憶力の自己評価などを含む質問紙調査を実施した。今年度で5年目の追跡が完了し,全体の追跡率はベースライン368名に対し221名の57%となった。次年度はこれら5年間の介入効果に関して分析を行い,成果をまとめる。これまでに3年間の継続効果を分析したところ,継続者の得点は介入群と対照群とも回により上昇するものの,介入群では実行機能・スピード処理に関連する符号や語想起でさらに上昇する傾向がみられた。認知機能が高く維持されている高齢者の加齢変化は緩やかであり,今後の継続した追跡評価が必要である。次年度は2期生の7年目の評価を継続して実施する。さらに昨年に続き,認知機能検査課題の反復利用の問題として,語想起検査の得点変化や,並行版のある記憶検査課題の並行性を詳細に検討した。また、対象者が地域でボランティア活動を継続参加できるよう、3地域のネットワーク化と連絡強化のための支援活動を継続的に行った。
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