研究概要 |
高齢者の認知機能に対する認知的介入プログラムの中長期的効果を検討した。平成16年度より、全国3地域で、子どもへの絵本の読み聞かせボランティア活動を主とする学校ボランティア事業「りぷりんと」を展開している。この「りぷりんと」活動による介入効果について、継続参加する高齢者(介入群)と健診のみ受診する高齢者(対照群)に対し、記憶,知識,判断,言語,速度に関する個別認知機能検査と日常の認知活動や記憶力の自己評価などを含む質問紙調査を実施した。昨年度で5年目の追跡を完了した。今年度は7年目の追跡評価を行うとともに、5年目の追跡結果を分析した。5年間の追跡率は、ベースライン362名に対し232名の64%となった。これらのうち、追跡期間中に精神・神経学的疾患が疑われた者や対照群に転じた者などを除き、5年間を継続参加した介入群75名と対照群104名の認知機能検査の成績を比較した。介入群の方が対照群よりも平均年齢が低く(65.8歳と67.7歳),平均教育年数が高かったので(13.1年と12.2年)、年齢と教育年数を共変量とする分散分析を行った。その結果、記憶では年齢による差は見られたものの、5年間の差は見られなかった。知識と判断と速度では、全体的に5年目の成績が高くなったものの、年齢との交互作用があり後期高齢者では減少する傾向が見られた。また言語では、課題により差があるものの、5年目で介入群の成績が上昇する傾向が見られた。以上、5年間の縦断的検討により、緩やかな認知機能の加齢変化と言語への介入効果が認められた。今後も引き続き継続して追跡評価を行う予定である。また、対象者が地域でボランティア活動を継続できるよう、各地域の自主的運営化や3地域のネットワーク化を強化する支援活動も行った。
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