平成21年度は、不規則に位置する大量の空間データから共分散関数の滑らかさを記述するsmoothing parameterをセミパラメトリックに推定する方法の開発に取り組んだ。実施した成果は以下の3点である。まず1点は、smoothing parameterを推定するためのセミパラメトリックモデルを考案したことである。モデル化のポイントは、区間を3つに分割し、セミパラメトリックな関数形を2次の微分係数までが一致するように滑らかな2次多項式で定義したことである。2点目はシミュレーションモデルを設計し、いくつかの具体的な例に対してsmoothing parameterの推定を行い、そのバイアス、平均二乗誤差を評価したことである。その結果、smoothing parameterの値が大きくなるほど推定精度が悪くなることがわかった。smoothing parameterの値が3程度までが現実的には意味のある推定ができる限界だろう。最後の3点目は、セミパラメトリック推定量の一致性までを示したことである。空間データの領域がひろがりかつデータ数が増えていくというmixed asymptoticsの下で、smoothing parameterの一致性が成り立つための条件を確立することができた。ただ、統計分析には欠かせない漸近正規性の証明はまだ成功しておらず次年度の課題としたい、と考えている。
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