本年度は不規則に位置する時空間データに非定常性を導入することをめざしてモデル化を行ってきた.空間データの非定常性を表現するモデルとして局所定常過程を仮定し,局所ピリオドグラムを提案した.昨年度に提案したピリオドグラムはデータの定常性を前提としたものであるため,局所ピリオドグラムはピリオドグラムの持つ定常性の制限を外して一般化したものである.局所ピリオドグラムの漸近不偏性,漸近分散の評価を行った.さらに,局所ピリオドグラムを使ってWhittle尤度関数を提案し,Whittle尤度関数を最小化するWhittle推定量を提案した.この推定量が一致性を持つための条件として,局所定常過程を空間過程に拡張し定義した.そして一致性を厳密に議論するために漸近理論を整備し,mixes asymptoticsとよばれる漸近論を仮定すれば,局所定常性の仮定のもとで,Whittle推定量が一致性をもつことを証明した.最後ににモンテカルロシミュレーションを実行して有限標本におけるパフォーマンスを検証して,局所定常スペクトルの推定のための有効な統計量となることを実証した. ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(2011.8.18-20)に出張してロンドン市地価への応用研究を行うためにデータ収集を行った.また国際統計学会(ダブリン,2011.8.21-26)に出席して成果を発表し,時空間分析の研究者と不規則に位置する大規模な時空間データに対するWhittle推定の有効性について議論を行った.
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