本年度は,前年度までに提案したWhittle推定量を改良することに成功し,その一致性を導いた.この推定量は,パラメータが時空間上で一様ではない場合に,ノンパラメトリックに時空間構造を推定するものである.改良のポイントは,前年度までに提案した推定量に対して複雑な手続きを必要とした標準化項を簡単な計算で代用したことにある.この改良により,計算手続きが簡略化しさらに高速な推定法を提案することができた. さらに,パラメータの非一様性をノンパラメトリックに扱う前段の方法に対して,パラメトリックモデルによって非一様性をモデル化し推定する一般化Whittle法を提案した.これは時地点ごとに独立に推定を行う前段のノンパラメトリックな推定法に対して,パラメトリックな曲面をBspline関数によって特定し,パラメータを最尤法によって推定する方法である.この最尤推定量に対して,一致性を導くことに成功した. 両推定量に対してモンテカルロシミュレーションおよび関東地区地価データを分析した実証分析を行い,実際のパフォーマンスを検証した.その結果,サンプル数が1万個を超える大規模な時空間データに対しても,高速な計算を行い,合理的な推定能力を持つことを実証した. 以上の結果について,国際統計学会(ダブリン,2011.8),研究集会「時系列・時空間統計解析の新たなる展開」(東京大学,2012.9)に出席して,時空間分析の研究者と議論を行い本成果の発表を行った.
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