研究概要 |
本研究では,マルコフ連鎖モンテカルロ法の局所性の問題を解消するために大域化理論の構築を目指している.本年度は,実験計画の構成を例とした最適化問題への大域化の方法論を提案した.前年度に過飽和実験計画構成のためのプログラミング環境を整え,C++言語でのクラス設計したことを受け,今年度に大域化の方法論の検証実験を行った.実験計画の構築問題では,第一ステップとして,列間の非直交度を最小化するように乱択によって列追加を行うことで初期計画を生成し,第二ステップとして,得られた初期計画の列の要素を入れ替えることで直交性の改善を行うという二段階最適化法を提案した.第一ステップは,マルコフ連鎖モンテカルロ法を基本アイデアとして条件付きで独立な列ベクトルをサンプリングすることに対応する.さらに,第二ステップが大域性を担保し,局所解からより良い解へ改善するためのサンプリングに対応する.この方法の有効性を検証するために,複数の論文で有用性が示されている既存の構成法との比較を行った.比較実験した全ての場合において,提案法は既存の構成法と同等かもしくはより良い計画が得られることを示した.この成果を日本計算機統計学会の和文紙に投稿し,論文として採択された。また,ISBIS-2010で招待講演として報告した.さらに,実験計画の構築問題を多角的に検討するため,固有値解析の観点での定式化や,有限体を利用する代数的方法の検討も行った.前者では数量化III類のアイデアを利用し,より良い列の並び替えを求める方法を提案した.この成果をJSPIに投稿し、論文は採択された.後者の代数的方法では,理論的な証明が残されているが,数値実験では最適解が得られること,および,二段階最適化法で構築した実験計画が最適であることの検証ができた
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