本研究の目的は、Euclid距離行列の数理的構造、特に順序構造を明らかにし、その多次元尺度構成法への応用において従来よりも正確かつ客観的な手法を提供することである。より具体的には、(1)Euclid距離行列の空間の順序構造をより明確にすること、(2)対応する点配置の空間(それは非負値定符号行列の空間の部分錘になる)の順序構造をより明確にすること、(3)上記の順序を効率的に表現する不変量や共変量を見つけること、(4)上記の多次元尺度構成法への応用、の4つの観点から研究し、順序構造に関する理解をより深めたいと考えている。 今年度は特に(2)の問題について結果が得られた。具体的には、Euclid距離行列の固有値と対応する非負値定符号行列の固有値の関係を記述する数学的定理を導くことが出来た。より正確に述べれば、非負値定符号行列の固有値の間にマジョライゼーションの意味での順序関係が成り立つとき、緩やかな条件の下で、対応するEuclid距離行列の固有値の間にもモジョライゼーションの意味での順序関係が成り立つことが明らかとなった。研究結果は論文"Majorization for the eigenvalues of Euclidean distance matrices" (Hiroshi Kurata and Pablo Tarazaga)として専門雑誌に投稿中である。
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