本研究の目的は、Euclid距離行列の数理的構造、特に順序構造を明らかにし、その多次元尺度構成法への応用において従来よりも正確かつ客観的な手法を提供することでる。 倉田は、Kurata and Sakuma(2007)において、「群によって誘導される順序(group-induced or dering、group majorization ordering)」なる概念を用いてEuclid距離行列の順序構造について調べた。本研究は、これらの理論をより発展させ、多次元尺度構成法をより精緻化することを目的とする。より具体的には、(1)Euclid距離行列の空間の順序構造をより明確にすること、(2)対応する点配置の空間(それは非負値定符号行列の空間の部分錘になる)(の順序構造をより明確にすること、(3)上記の順序を効率的に表現する不変量や共変量を見つけること、(4)上記の多次元尺度構成法への応用を扱い、順序構造に関する理解をより深めたいと考えている。 本年度は上記の(3)と(4)の問題を中心に研究を進めた。特に、セル行列(cell matrix)の構造を持つユークリッド距離行列について考察し、その固有値の順序構造などについて明らかにした。また、所与のユークリッド距離行列に最も近いセル行列を求める問題についても新しい結果が得られた。その結果は、Pablo Tarazaga教授(テキサスA&M大学)との共著として公表準備中である。 多次元尺度構成法は、考察対象の母集団に複数の群が混在するような状況、即ち母集団が混合分布である場合に用いられることが多い。混合分布を記述するのに有用な概念として、プリンシパル・ポイントがある。本研究では、関連したトピックとして、昨年度と同様に多次元混合分布のプリンシパル・ポイントの存在範囲についての結果も得ている
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