研究課題
今年度は、昨年度までに行っていた、誤特定したCox回帰モデルを前提とした治療効果の推定法の開発について、論文投稿ならびに改訂作業を行った。通常の部分尤度を最大化する推定量は、比例ハザード性が成立しない場合には、解釈ができなくなるが、逆確率重み付け法による重み付き部分尤度最大化による推定法を提案した。この推定量は比例ハザード性が成り立たない場合にも、対数ハザード比の時間平均と解釈され、解析手法を事前に指定する無作為化試験での応用の可能性を持っていると考えられる。さらに、セミパラメトリック理論による共変量情報を用いた推定精度を改良する方法を導入した。比例ハザード性が成り立つ場合には、一般論の帰結より効率が上昇する。比例ハザード性が成り立たない場合にも、一致性や漸近正規性を示すことが可能であるので、妥当な推測が可能であるが、実際に効率が改良するかは未知である。シミュレーション実験によると、実際に効率が上昇すると考えられるが、理論的な考察は未知のまま残されており、今後の課題である。この研究結果はLifetime Data Analysisに掲載が決定している。関連する研究として、無作為化臨床試験において、上述の共変量調整法によりどの程度効率が改良されるかをデータから推定するための簡明な公式を導出した。この式は割り付けの情報を知ることなく計算可能であり、ブラインドレビュー下で計算が可能である。この性質から、ブラインドレビュー下で調整する共変量を選択する手続きを構成することができる。一般に無作為化試験ではモデルの選択を避けるが、妥当性を損なうことなくモデルを選択する1つの方法と提案法は与えている。この研究結果については、2011年度の統計関連学会で発表し、専門誌に論文を投稿中である。
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Statistics and Probability Letters
巻: 82(2)巻 ページ: 371-377
doi:10.1016/j.spl.2011.10.016
Lifetime Data Analysis
巻: (In press)
Communications in Statistics, Simulation and Computation