本研究は、高感度で構造解析が可能な質量分析装置(MS)と液体クロマトグラフィー(LC)を組み合わせたLC/MSを使用して様々な細胞が発現する糖鎖を分析し、得られた発現糖鎖情報をマイクロアレイで培われたバイオインフォマティクス的手法を応用して各試料間のデータの統計学的データ解析を行って発現糖鎖パターンによる細胞の判別や診断等に応用する基礎技術を確立するとともに、様々な細胞の発現糖鎖をこの手法で解析して細胞機能と発現糖鎖の関連性を調べることを目的とする。 これまで、LC/MSにより取得されたデータをライフィクス社より開発されたLC/MS用データ解析ソフトウェアSignpost MSにより読み込ませ、LC-MSによる各分析で起こるアライメントのズレを補正することができた。さらに様々な細胞から抽出した糖脂質をこの手法で解析してそれぞれの細胞に発現する糖脂質の発現パターンの相違について統計学的な解析を行った。本年度は様々な試料に対してアライメント補正した結果を統計学的に解析し、細胞特有な糖鎖発現パターンについて検証する。 本年度は様々な病態の小児白血病の細胞検体を分析したところ、統計学的にもそれぞれの病態で異なった発現糖鎖パターンを示すことが明らかになった。その結果を詳細に検証すると、過去の報告とも一致することに加え、乳児性白血病にはこれまで報告のない中性糖脂質Ln3Cerが発現していることを見いだすことができた。今後更に解析する検体数を増やし、実際の診断への有用性を示す必要がある。
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