研究概要 |
平成22年度は,外生変数型自己回帰モデル(NNARモデル)をabsence seizure型てんかん患者のfMRIデータに適用し,てんかん性の異常脳血流の検出を試みた。fMRIデータは頭皮上の電極で計測される脳波と同時に計測され,脳波上にてんかん性の異常脳波が出現する時間情報も記録されている。まず,発作間歇期のfMRIデータを定常的な脳血流の変動と仮定し,その区間においてNNARモデルを同定した。引き続いて,その同定したモデルで残りの区間をフィルタリングし,推定されたイノベーションの強度を統計的に評価した。その結果,脳波上に発作波が出現する数十秒前から血流が有意に低下し,その後徐々に定常状態へ戻る部位が存在することが分かった。ここまでの結果について,国際学会や国内での研究会において研究発表を行った。 NNARモデルはてんかん性fMRIデータ以外のイメージングデータをベンチマークデータとして用いた研究に於いても学術誌への掲載など一定の評価が得られており,数理的解析方法においては,今年度までに確立したといって良い状況である。てんかんの発作パターンや病巣部位は患者によって異なるので,解析結果については,さらなる臨床的な検証が必要である。また,発作間歇期が短く,NNARモデルの推定が困難な症例もあるので,このような場合にどのようにNNARモデルを同定するかこれらは引き続き検討を続けている。
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