研究概要 |
昨年度までの研究成果により,海馬歯状回顆粒細胞層において見られる生後のニューロン新生過程において,最後の細胞分裂から1~2週間の間に顕著に新生細胞が消失する現象が観察されていた。この時期(臨界期)を乗り越えた新生細胞は,その後成熟ニューロンへと成熟し,既存のニューロンネットワークに組み込まれていくと考えられる。この現象は非ニューロン系譜細胞では認められず,ニューロン系譜細胞にのみ見られる特徴で,おそ.らくアクティビディーに依存したアポトーシスによる細胞選抜が行われているものと推察される。この可能性を検討するため,細胞のアクティビティーを制御するタンパク質性機能プローブとアポトーシスによる細胞死同定のためのレポーター分子を直列に配置した新たな機能プローブを作製し,生後ニューロン新生過程め系譜解析への応用に向けた性能評価を行った。具体的には,細胞のアクティビティー制御には,改変型チャネルロドプシンの一つ,チャネルロドプシンワイドレシーバー(ChRWR)を用いた光による細胞膜の脱分極(活性化)とショウジョウバエのアラトスタチン受容体(AlstR)とそのリガンドを用いた細胞膜の過分極(抑制化),アポトーシスプローブについては,カスパーゼ3の活性化によりレポーター分子の細胞内局在が変化する新規に開発したプローブ(Apojudge)と従来より用いられているFRETプローブを選択し,これらを直列に配置した2種類の機能プローブ,ChRWR-ApojudgeとAlstR-FRETを作製し,HEK293やNIH3T3を用いて,プローブ発現細胞のアクティビティー制御能やアポトーシス検出能を評価し,実用化の目途をつけた。
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