研究課題
神経可塑性関連遺伝子Arc(またはArg3.1)は、大脳において神経活動に高感度に応答する神経特異的前初期遺伝子であり、同じく前初期遺伝子に属するc-fosやzif268と共に神経活動マーカーとして免疫組織化学やin situ hybridization(ISH)等に頻繁に利用されている。近年、Arc/Arg3.1タンパクはエンドサイトーシス過程に関与してグルタミン酸受容体動態の制御因子として働くことが示され、神経可塑性や神経ネットワークの恒常性、更に記憶・学習過程に関わる因子としても注目を集めている。本研究では、このArc/Arc3.1の活動依存的発現機構を解析し、シナプスから核へのシグナルカップリング機構およびArc/Arc3.1発現の生理的意義を明らかにすることを目的として生化学的・分子生物学的および生理学的解析を行う。平成23年度は、活動依存性プロモーター下に緑色蛍光タンパクを融合したArc/Arc3.1タンパクを配置した動態レポーター用いて、Arc/Arg3.1タンパクの樹状突起スパイン部における神経活動依存的な動態変化の解析を行った。その結果、Arc/Arg3.1は従来考えられていたように活動性の高いシナプスに動的に集積するのではなく、逆に活動性の低いシナプスにより多く集積することが明らかになった。さらに、このシナプス集積にはカルシウム・カルモジュリン依存的キナーゼIIのβサブユニット(CaMKIIβ)とのタンパクータンパク相互作用が重要であることが、生化学的および細胞生物学的な解析により示された。
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Cell
巻: (印刷中)(掲載確定)
10.1016/j.cell.2012.02.062
Science
巻: 333 ページ: 891-895
DOI:10.1126/science.1205274
JACS
巻: 133 ページ: 6745-6751
DOI:10.1021/ja200225m