研究課題
記憶・学習に深く関与する海馬での神経可塑性においてはNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)が重要な役割を担うことが知られている一方、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)の役割には不明な点が多い。これまで、mGluR刺激によるNMDA電流の増大(J.Neurosci.22:5452,2002)やリン酸化の亢進(J.Neurosci.24:9161,2004)などが報告されており、mGluRによるNMDARの機能修飾が示唆される。一方、電位依存性カルシウムチャネル(voltage-dependentcalcium channel;VDCC)依存的LTPの詳細な分子機構は不明な点が多かったが、申請者らは脱分極パルスにより誘導されるシナプス入力非依存性のVDCC依存的LTPを見出した(J.Neurosci.29:11153,2009)。mGluRによるVDCCの修飾は様々な系で報告されている(Nature,382:719,1996)ことから、本研究計画では海馬の可塑性誘導閾値調節におけるmGluRの役割を、特にターゲットとしてNMDARおよびVDCCの修飾機構に焦点をあてて明らかにすることを目的とした。申請者らはVDCC依存的NMDAR非依存的LTPを報告していることから(J.Neurosci.29:11153,2009)このVDCC依存的LTPのmGluRによる修飾に着目した。mGluR5がIP3受容体、L型VDCCと機能的複合体を形成し、VDCC依存的LTPを増強すること、さらにmGluR5欠損マウスでこの作用が消失していることを見出した(論文投稿中)。これらの結果から、mGluRを介した非ヘブ型可塑性調節への新規のシグナル制御機構が示唆された。さらに生化学的解析によりmGluRとNMDARとの相互作用が示唆されていることから、今後はこれら非ヘブ型可塑性と従来の活動依存的NMDA依存的ヘブ型可塑性との相互作用を、mGluRとNMDARとの相互作用という観点から解明することを目指す。
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J.Physiol.
巻: (in press)
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