| 研究概要 |
本研究では、睡眠の中枢とされる腹外側視索前野(Vbntrolateral preoptic area, VLPO)をシステマティックに電気刺激した際の覚醒系ニューロン群の活動及び同時に記録した個体としての睡眠・覚醒状態の変化を解析した。外科処置により頭部に小型プレートを固定し、これを利用してラットを無麻酔の状態で脳定位装置に固定した。睡眠中あるいは覚醒中に脳幹及び後部視床下部の覚醒系ニューロン活動を単一ユニット記録しながら、視索前野(VLPOとその周辺)を電気刺激し、動物の睡眠・覚醒状態、大脳皮質脳波、筋電図とともに記録中の各ニューロン活動にどのような変化が現れるか観察した。まず刺激効果をマッピングしたところ、VLPOを中心とした腹外側部の刺激によって脳波に大振幅徐波が現れた。この時持続的な筋電図活動は抑制されていたが、相動的な活動は増加し、刺激後のこの状態が徐波睡眠であるとは言えなかった。視床下部後部のニューロン活動は、視索前野刺激により抑制された。但し、刺激による脳波の徐派化とは必ずしも相関しておらず、逆に興奮するものも存在した。脳幹の覚醒ニューロンでも興奮、抑制の両方が見られた。これらの結果は、先に我々が明らかにしたようにVLPO領域には睡眠系ニューロンだけでなく覚醒系ニューロンも存在しているため、それらが刺激された結果として脳波の徐派化を伴った覚醒系の賦活という解離状態が現れたと考えられる。
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