| 研究概要 |
ヒトの言語音の弁別メカニズムを動物モデルで研究する目的で、ラットに合成言語音の弁別学習をおこなわせ、聴覚野活動を内因性フラビン蛍光によるイメージングで検討した。
1)聴覚野は一次聴覚野の他、数個の領野からなる。合成母音やホルマントの弁別学習をさせたラットでイメージングをおこなうと、母音やホルマント刺激で前聴覚野および背側聴覚野に著明な蛍光反応が認められた。前聴覚野および背側聴覚野は母音弁別学習を阻害する破壊部位と対応しており、これらが母音弁別に重要な働きをしていると考えられる。
2)子音についても検討した。摩擦子音(/s, sh, f/など)は帯域雑音とみなすことができる。1つの極を持つ極モデルにより摩擦子音を合成し、ラットに/s/と/sh/を弁別学習させることができた。弁別学習をしたラットおよびナイーブなラットで摩擦子音が一次聴覚野や腹側聴覚野に蛍光反応が起こすことを見出した。母音と摩擦子音で反応領野が異なり、言語音の種類により識別に関与する領野が異なることが示唆された。
3)聴覚領野間の機能的結合を調べるため、各領野を電気刺激し誘発される蛍光反応を調べた。前年度の研究により、前聴覚野を刺激すると背側聴覚野および、前聴覚野の腹側部に反応が認められることが分かった。今年度、一次聴覚野の刺激により調べると、背側聴覚野、腹側聴覚野、前腹側聴覚野、後聴覚野に蛍光反応が認められた。前聴覚野では反応は弱かった。これらより、聴覚野は一次聴覚野を中心とする経路と前聴覚野を中心とする経路の並列した経路よりなり、有る程度独立した情報処理がおこなわれていると考えられる。また、背側聴覚野と前腹側聴覚野は一次聴覚野と前聴覚野の両者から入力を受けており、一次聴覚野と前聴覚野で処理された情報が統合されていると考えられる。
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