研究代表者らは成熟ラット海馬スライス標本におけるテタヌス誘発性同期的神経活動についてその発生メカニズムを解析してきた。最近イオンチャネル型グルタミン酸受容体拮抗薬CNQXとAP5の存在下においてもテタヌス刺激誘発性のネットワークオシレーション(prototypic afterdischarge)が海馬CA1領域に誘発されることを発見し、これがインターニューロンネットワークにより惹起されること、および、その構成ニューロンは高頻度発火特性を持つ多形・錐体細胞層のインターニューロンであることを突き止めた。本研究では、このprototypic afterdischargeが海馬CA1の近傍領域、すなわち、側頭葉、嗅内野、海馬CA3、歯状回などにおいても誘発され得るかどうかを検討し、さらに誘発されたprototypic afterdischargeに関してはその薬理学的性質を検討した。側頭葉、嗅内野では、CA1と同様のprototypic afterdischargeが発現したが、CA3および歯状回では誘発されなかった。側頭葉と嗅内野におけるprototypic afterdischargeは、CA1と同様、GABA_A受容体拮抗薬ビククリンおよびギャップ結合阻害薬カルベノキソロンによって完全に消失した。CA3領域ではCA1領域と形態学的に同様の高頻度発火介在細胞が存在するにも関わらず、グルタミン酸伝達遮断条件下でリズムが惹起されない事実は、大変興味深い。これらの結果から、インターニューロンネットワークのリズム生成能力には領域による差異が存在すると推察される。
|