研究概要 |
長期記憶の形成は、trainingを複数回、間隔(inter trial interval, ITI)を空けて繰り返すspaced trainingで促進され、間隔を空けずに繰り返すmassed trainingでは阻害される。これまでの研究からITIでMAPKが活性化されることが示されているが、MAPKの役割には不明な点が未だ多い。我々は長期記憶形成に必須の転写因子CREBとc-fos間の転写サイクルがspaced trainingで形成されること、この転写サイクルが長期記憶形成に必須であること、さらにITIでのMAPK活性化はこの転写サイクルの開始と維持に必要なことを見出した。spaced trainingにおいてMAPKはITIにより活性化される一方、trainingにより不活性化される。従ってITIの無い、連続したtrainingで構成されるmassed trainingではMAPKの活性化が抑制される。長期記憶の形成はMAPKの不活性化も含むMAPK活性の周期的な変化が重要とする説があるが、training中でもMAPKの活性が抑制されない変異体では、massed trainingでもCREB-c-fosの転写サイクルが活性化し長期記憶が形成されることを見出した。これらの結果はspaced training中のMAPK活性の周期的な変化ではなく、活性の総量が長期記憶の量を決めていることを示唆している。
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