研究課題
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPGs)は、脳における主要な細胞外マトリックスであり、神経系の可塑性に深く関わっていると考えられる。本研究では、バソプレッシン神経系が存在する視床下部や下垂体後葉でCSPGsの局在を観察したところ、細胞外に密なマトリックスを形成していることが明らかになった。通常の飲水に代わりに2%NaClを飲ませた浸透圧刺激により、視床下部や下垂体後葉のバソプレッシン神経に存在するある種のCSPGsの発現量が顕著に減少した。このCSPGs発現量減少は、RT-PCR解析よりmRNA発現量による低下ではないことが分かった。よって、これらの発現量減少は、プロテアーゼなどによる分解であると推測された。そこで、バソプレッシン神経系におけるCSPGsなどのマトリックス分解酵素であるTissue-type plasminogen activator(tPA)ならびにPlasminogenについて調べた。tPAは、バソプレッシン神経の樹状突起や終末部に特異的に存在し、plasminogenについてはアストロサイトに局在していた。tPAは、浸透圧刺激によるバソプレッシン神経の興奮により放出され、細胞外マトリックスを分解することが確認された。また、浸透圧刺激によりtPAのmRNA発現が有意に増加した。tPAならびにPlasminogenのノックアウトマウスは、浸透圧刺激によるバソプレッシン分泌能力が著しく低く、浸透圧負荷により顕著な体重減少を示し、浸透圧調節能力が低いことが分かった。以上の結果は、CSPGsを主とする細胞外マトリックスは、バソプレッシン神経の活動に依存してプロテアーゼなどにより分解調節されることで、神経回路の可塑性にかかわりバソプレッシンの分泌を調節していることが示唆された。
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