本研究では、視床下部レプチン・メラノコルチン系摂食回路を構成するニューロンへの内臓感覚入力様式を形態学的に探索し、内臓感覚による摂食行動の修飾機構の解明に迫ることを目的とした。 22年度は、視床下部へ内臓感覚情報を送る結合腕傍核からオレキシン含有ニューロンへの投射様式に関する前年度の研究成果を論文にまとめて、Brain Research誌に投稿し、発表するとともに、大脳皮質味覚野が存在すると考えられている島皮質領域からの投射線維と、オレキシン含有ニューロンやメラニン凝集ホルモン含有ニューロンとの関連を、視床下部にて検索した。 実験では、ラットを用いて、島皮質味覚野領域に順行性標識物質であるビオチン化デキストランアミン(BDA)を注入し、組織化学的にBDA標識線維および終末を検出後、オレキシン陽性ニューロンやメラニン凝集ホルモン陽性ニューロンを免疫組織化学によって検出した。その結果、島皮質領域からの投射線維と、オレキシン陽性ニューロンやメラニン凝集ホルモン陽性ニューロンの分布領域の一致を、視床下部外側野の最外側部で、内包および視床下核のすぐ内側方の領域に認めた。この領域内では、投射線維が両陽性ニューロンの細胞体や樹状突起に接する像がたくさん認められ、両者の間にシナプスが形成されている可能性が示唆された。22年度に続き、現在、電子顕微鏡学的にこのシナプス形成の存在を確認しているところである。
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