研究概要 |
本年度は、 1. 雄ラット内側視索前野・扁桃体弓mPOAM内での連続ニッスル染色標本を作成した。 2. 内側扁桃体、分界条床核、内側視索前野mPOAM内でのアロマテース(AROM)、エストロゲン受容体(ERα, ERβ),アンドロゲン受容体(AR)の発現を免疫組織化学的に同定した。 3. AROM/ERα ; AROM/ERβ ; AROM/AR ; ERα/ERβについて免疫2重染色法による検出に成功し、それぞれの共発現に関するデータ収集を行なった。 4. 性腺・副腎摘出により両者の影響を最小限にした雄ラットを用い、ADX+OCX+oil、+testosterone, +17 B-estradiol, +dihydrotestosteroneをを投与したラットを作成し、4種の個体間で脳内ERα, ERβ, ARの発現の数と反応強度について、内側扁桃体、分界条床核、内側視索前野を中心に比較を行い、性ステロイド投与による脳内AR、ERα、ERβおよびAROMの発現制御を解析し、特にエストロゲンによるERαのダウンレギュレーションと、アンドロゲンによるアンドロゲン受容体のアップレギュレーションを明らかにした。 5. マウスにおけるAROMニューロンのスクリーニングをWild-typeマウスとAROMノックアウトマウスを比較して行なった。この結果、胎生期型AROMニューロンとmPOAMの胎生新生仔型AROMニューロンが間違いなく脳内エストロゲン合成の中心領域であることが確認された。一方、免疫組織化学的同定が報告された扁桃体中心核にはAROMKOマウスでも免疫反応として検出され、これが交差性非特異反応の結果かあるいは、全く異なる遺伝子由来の可能性しかないことが示された。また海馬領域にはAROMニューロンが存在せず、過去にAROMニューロンとして報告されたものの存在が疑わしいことが判明した。 6. DSRed-or GFP-ERα、-ERβ、-AR、-GRのcDNA作成に成功した。 7. 培養細胞を用い、予備的に、これらをCos7, HEK293, HeLa, HEp-2に細胞内導入し、ステロイドによるステロイド受容体の核内移行のリアルタイムイメージの撮影に成功した。 8. STB/HAP1の細胞内導入を行ない、性ステロイドによる性ステロイド受容体の核内移行についてSTB/HAP1による細胞内動態制御を解析し、特にアンドロゲン受容体とグルココルチコイド受容体に関してSTB/HAP1が細胞質でこれらを吸着するデータを収集しており、ホルモンフリーの時のそれぞれの受容体の制御中継領域として働く可能性が示唆された。
|