研究課題
新規の脳ペプチド、relaxin 3(RLN3)/insulin like peptide 7(INSL7)の生理機能探究のために、RLN3脳室内投与を行った。脳室内投与後2時間でRLN3を投与したラットは約4gの摂食亢進作用が見られた。反応するニューロンをc-Fos発現をマーカーとして摂食関連領域を探索すると、受容体の存在する室傍核(PVN)、視索上核(SON)にc-Fos発現がみられた。外側視床下部や弓状核にはほとんど発現がみられず、PVNやSONを介した摂食亢進作用が示唆された。そこでいかなる神経ペプチドにc-Fosが誘導されるか二重免疫法で検索すると、PVNではCRFやAVPと、SONではAVPとの共存が見られた。RLN3はストレス反応調節物質でもあるので、脳室内投与後血中ACTHを測定すると生理食塩水投与群に比べて有意な上昇がみられ、またPVNでのCRF mRNA発現の増加も認められた。このことからRLN3はストレス応答の主軸である視床下部-下垂体系のCRF-ACTH反応を活性化させることが明らかになった。この成果はJ Mol Neurosci誌に投稿中である。その他、RLN3遺伝子の転写亢進に細胞内cAMP-PKA pathwayが重要であることを培養細胞用いた系で証明しactive promoter regionもexonlの5'上流60-117の領域に存在することを報告した(Tanaka M et al, J Neurosci Res, 2009)。またこの約60塩基対の領域に結合してRLN3遺伝子の転写を活性化する転写因子を探索する過程で新規のSTAT5AのスプライシングバリアントをクローニングしてこのバリアントがSTAT5Aのfull lengthの機能を抑制することを明らかにして報告した(Watanabe et a1, FEBS J, 2009)。RLN3 KOマウスはES由来の129系の遺伝子が染色体上RLN3近傍に残っているため、バッククロスの回数を増加させ、近傍のサテライトマーカー205,248が完全に野生型のC57BL16に置換されたマウスが得られて、今年度一通りの脳神経学的な行動解析を行う予定である。
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FEBS Journal 276
ページ: 6312-6323
J Neurosci Res 87
ページ: 820-829
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/cellbio/