結節性硬化症は、てんかん・知的障害・自閉症を合併する母斑症である。その原因遺伝子はTSC1/2であり、結節性硬化症の患者ではTSC1/2の変異によって、RhebがGTP型となり、その下流のmTORが活性化されるため、病気を発症すると考えられている。平成22年度は 1)結節性硬化症においてミトコンドリアの増加・機能亢進が生じていると考え、TSC2に変異のあるEkerラットの脳からsynaptoneurosomeを調製し、酸素消費量とATP量を野生型と比較した。酸素消費は検出出来なかったが、ATP量は結節性硬化症の方が高い傾向が見られた。そこで、Complex-VであるATPaseεサブユニットをCFPとYFPで挟んだFRETベクターを用いて、樹状突起内のATPを可視化したところ、結節性硬化症の方が樹状突起内のATP濃度が高い事が確認された。 2)Ekerラットから海馬の神経細胞を初代培養し、その樹状突起を野生型と比較したところ、Ekerニューロンはスパインを形成せず、フィロポディアのままであることが確認された。さらに、mTORの阻害薬であるラパマイシンを添加しても、スパイン形成は回復しなかった。 3)そこで、スパイン形成にはmTORは関与しないと考え、上流のRhebと結合する蛋白質を探索し、RBP(rheb-binding protein、RBP)を同定した。RBPを培養ニューロンに発現させるとニューロン形態が著しく変化し、スパイン形態も変化することから、RhebはRBPを介してスパイン形成を制御していると考えられた。
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