研究課題
本研究は、申請者らのこれまでの研究でマウス発生初期胚に認められることが確認された『前脳コンパートメント』の形成過程に対応して発現するPax6等の転写因子群が、同じく前脳コンパートメントに符合して発現する細胞接着分子カドヘリン6(Cdh6)をどのように制御するのか、また、それら前脳特異的な遺伝子発現様式が脳領域性の形成や維持にどのような役割を果たすのか、申請者固有の解析技術を効率良く組み合わせて解き明かすことを主目的としている。平成23年度においては前年度に引き続き約175kbのCdh6ゲノム領域をカバーする細菌人工染色体(BAC)にレポーター遺伝子を組み込んだコンストラクトから任意のゲノム断片を相同組換えの原理を用いて体系的に削除し、順次マウス受精卵前核へ注入してトランスジェニック(Tg)マウス個体を作出した。そして、どのゲノム断片除去が前脳コンパートメントに対応したCdh6発現に影響を及ぼすのか、各BAC-Tgマウス胚内で検定したところCdh6遺伝子転写開始点上流40kb付近に位置する110bpのゲノム領域がCdh6の前脳コンパートメント特異的な発現に必要なことが見出された。この110bp断片がコンパートメント特異的な発現に十分かどうかをレポーター遺伝子に直接連結して検証したところ、断片単独では発現を再現できない一方で、隣接するゲノム領域を含めると安定転写活性を有することが判明し、これら双方に含まれるPax6とは異なる転写因子が結合するシス領域の協同作用がCdh6の前脳コンパートメント特異的な発現に重要であることが示された。本研究成果は、精緻な神経系の領域性獲得過程における細胞・分子機序を理解するのに際し、当初の予想とは異なる新規解析基盤を明示するため、きわめて意義深い。
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Neuron
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DOI:10.1016/j/neuron.2011.07.006
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http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_diag/index.html