研究概要 |
申請者は自閉性障害の患者のシナプス接着蛋白SynCAM/RA175(Cadm1)遺伝子に2つの変異を同定した(Zhiling and Fujita et al., 2009)。本研究はASDモデルマウスであるCadm1-KOマウス、CADM1(Y251S)KIマウスを用いてLoss-of-functionとGain-of-functionの両面からASDの分子病態の解明を目的とする。 昨年度は1)正常および変異Cadm1-MycTagを導入したROSA26遺伝子のBacクローンに-Cadm1-Mycを挿入し、ROSA26-Cadm1-Myc-BacTgトランスジェニックマウスを作製した。 2)Cadm1のC末端をリガンドとしたPull-down法、およびMycTagの抗体カラムを用いて、小脳のCadm1-複合体の分離およびCadm1のPDZ結合モチーフに結合するScaffold蛋白の同定を試みた。本年度はCadm1-KOマウスは不安、攻撃性の増大する他、自閉性障害の患者にしばしば観察されるように、小脳に軽い発達異常が見られること、また、ヒト言語障害に対応する超音波コミュニケーション障害が存在すること、またマウス小脳では、Cadm1はGABAB2受容体と小脳プルキンエ細胞とParallelファイバーとのシナプスに局在することが明らかになった。 一方細胞培養系を用いた実験では変異Cadm1は小胞体に蓄積し、小胞体ストレスを誘導し、神経細胞のデンドライト形成を抑制することが明らかになった(Fujita et al.,2010)。 また、本年度、CADM1(Y251S)KIマウスが作成されたことから、来年度はCADM1(Y251S)KIマウスでの小胞体ストレスとASDの病態との関連についても解析する予定である。
|