研究概要 |
細胞培養系を用いた実験では変異Cadm1は小胞体に蓄積し、小胞体ストレスを誘導し、神経細胞のデンドライト形成を抑制する。実験計画に従い、正常および変異Cadm1-Myc を挿入したトランスジェニックマウスを作製したが、正常および変異Cadm1分子が脳内で切断されており、Myc抗体を用いて解析することが困難であった。そこで、CADM1(Y251S)KIマウスを作製し、Gain-of-function とCadm1-KOのLoss-of-functionとの両面からASDの分子病態の解明を試みた。 Cadm1-KO マウスは不安、攻撃性の増大の他、自閉性障害患者にしばしば観察されるような小脳での軽い発達異常の観察、ヒト言語障害に対応するマウス超音波コミュニケーション障害の存在、マウス小脳におけるCadm1(プルキンエ細胞)とGABAB2受容体(Parallel ファイバー)とのシナプスでの局在(PLOS One 2012)を明らかにした。 Cadm1をリガンドとしたPull-down法、および免疫沈降法で、Cadm1-複合体の分離およびCadm1のPDZ結合モチーフに結合するScaffold蛋白を解析したところ、PSD95に結合せず、Mupp1と結合すること、逆にNeuroliginはMupp1と結合しないことから、NeuroliginとCadm1は異なったシナプス複合体を形成していると考えられた。また、Cadm1-KOマウスにおいてGABAB2受容体のレベルの増大を明らかにした(J Neurochem. 2012)。また、作製したCADM1(Y251S)KIマウスを解析し、小胞体ストレスとASDの病態との関与を示唆した。今後小胞体ストレスのシグナルを制御するTSC1,2との関連についての解明を行う。
|